《MUMEI》 ◇◆◇ 熱が引いてきたのか、咲弥は起き上がっている事が多くなった。 額に手を当てても、さほど熱さは感じない。 気怠さも頭痛も治まっていた。 黒蝶はその様子を見て確信した。 「よし、大丈夫みたいだな」 「うん」 咲弥は、ようやく自由になれると思うと嬉しかった。 何せ三日も邸の中に閉じ込められていたのである。 暫くは安静に、という薬師の忠告を気にしつつも、傍らの黒蝶に、咲弥は怖々と口を開く。 「ねぇ黒蝶、外に‥出てみてもいい?」 それが気晴しになるのなら、と、黒蝶は承知した。 咲弥は満面の笑みを浮かべ、徐に立ち上がる。 「歩けるか?」 「うん」 黒蝶に支えられるようにして、咲弥は庭へ出た。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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