《MUMEI》 眞知子「パパ起きて……」 昭一郎を揺する。 「ああ。」 昭一郎は高熱で暫く会社に行けない日々が続いていた。妻・眞知子は仕事の合間を縫って昭一郎を看病している。 「昨日、雪が凄くて、見てほら。」 カーテンを開け、陽を入れる。昭一郎は眩しそうに目を細めた。 「……今日は除雪してないのか……」 眞知子は僅かに乱れた心を落ち着かせる。 「ええ。」 眞知子が声を振り絞って出たのは返事だけだった。 「今朝、騒がしかったな。」 「何でもないわ……」 拳を結び、眞知子は嘘をつく。 前へ |次へ |
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