《MUMEI》

◇◆◇

 夜は更け、亥の刻。

 咲弥は静かに文字を目で追っていた。

 そこへ、ひょっこりと現れた黒蝶。

「あれ、まだ起きてたのか」

「‥‥‥?」

 咲弥は徐に顔を上げた。

「あ、うん。少し日記を読み返してたの」

「お、随分書きためたんだなぁ」

「そうみたい。あの日からずっと書いてきたから」

 咲弥はふと、懐かしい記憶を思い起こすかのような眼差しをした。

「そういや‥咲弥が来てからだいぶ経ったもんなぁ」

 黒蝶はぼんやりと呟いた。

◇◆◇

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