《MUMEI》

高校生に混じって次々とシュートを打つ。


キーパーの動きで大体キーパーの力量がわかる。


「こいつかなり上手いね。」


「うん。見たことないけど、1年生かな?」


「いや、あいつ2年生ですよ。」


「え?いた?あんなの?」


「翔太さんたちが引退してから入ったんですよ。」


「マジで?よく見つけたな。」


「ちょっと本気で打ってみたいんだけど。」


「いやいや、ヤマ。キーパー練だから。キーパーの練習になんなきゃダメだから。」


キーパー練習はあらかじめ打つコースを決めてから行うのが普通。


コースは左右高低の四隅を狙う。さらにキーパーの体があったまってきたあたりでシューターの自由なコースにシュートを打つ。


これが基本。


「まぁ俺が本気で打って練習にならないってことはないだろ。」


「…それもそうかもね。」


そうかも。そう言いながらも思ってた。


勝負になるわけない。


ブランクがあるって言ってもヤマのシュートが止められるとは思わなかった。


ヤマは一見ガタイのいい選手には見えない。


一見。


でもハンドボールに必要な筋肉は備わっている。


ハンドボールに必要な筋肉。


それは体全体を指すと言ってもいいだろう。


腕の筋肉や足筋に始まり。
背筋や腹筋。
一見ガタイがいいようには見えないヤマは、それらの筋肉がバランスよくついている。


そして経験値の違い。
中学時代からエースだったヤマのシュートが、止められるはずない。


「じゃあ行くよ〜!!」


ふざけているように見えるヤマの顔が、ステップからシュートに移る瞬間。


鋭い目付きに変わる。


ビシュッ!!


理想的なフォームから打たれたヤマのシュートが、右上のコースに決まった。

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