《MUMEI》 雅彦は、大きな体を丸めて、叱られた犬のような目で私を見つめた。 「…いいわよ、もう」 「兄貴に、たたき返したり、…する?」 「しないわよ」 私の言葉に、雅彦は意外そうな顔をした。 「…もう履いちゃったから、返品できないし。 靴に、罪は無いでしょ?」 私は、かなり苦しい言い訳をした。 「蝶子ちゃん、もしかして… 兄貴と、仲直り、した?」 「ど、どうして?」 「何か、兄貴に対して前より柔らかくなったし。 服装とか、昔に近くなってる気がする」 (う…) さすがは、幼なじみだ。 見てないようで、見てるし、…気付いてる。 「もしかして、もう付き合ってるとか?」 「それは無いから!」 (しまった) 雅彦はちゃんと小声で訊いてきたのに、私はつい大声になってしまった。 慌てて口を押さえたが、…もう遅い。 周囲が私に注目しているのがわかった。 (恥ずかしいよ〜) 私が真っ赤になってうつ向いていると 「お気に召して頂いて、光栄です。 …では、履き替えましょうか?」 雅彦が、私にひざまずいて、ニコリと笑った。 「…『お願い』って言って、合わせて」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |