《MUMEI》 ◇◆◇ 「‥‥‥‥静か‥だな」 ぼそりと呟くような口調で草薙が言った。 咲弥と黒蝶が頷く。 人影は疎らだ。 ただ風と水の音だけが静かに響いている。 「‥‥あ」 流水を見つめていた咲弥が、小さく声を上げた。 「どうした?」 「今‥水の中に何か──」 「ん?───ああ、魚だな、こりゃ」 「魚──」 水中で銀色の鱗が光る度、咲弥はきらきらと目を輝かせる。 可愛らしい、と黒蝶は密かに思った。 彼女にとって咲弥は、まるで妹のような存在なのだ。 草薙は少し離れた所から、二人の様子を見守るように見つめている。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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