《MUMEI》

午後からは父兄や友人など、一般の人達も増えて来ていた。

私たちのクラスのプラネタリウムも、なかなかの入りようで、引っ切りなしに、人が集まっていた。

5分の公演時間が終わると、5分間電気を点ける。また2分前に電気を消し、5分間のナレーションが始まる。そんな繰り返しだった。

「あのー、すいません。あの窓側の下にある星は何座ですか?」


電気を消してすぐ、どこからか女の子の声がした。
ナレーションの当番は私で、必然的に私が答えなくてはならない状態になってしまった。

「たぶん・・・こと座です。」

ナレーションの私が『たぶん』と言ったことに、会場全体からクスクスと笑い声が聞こえる。

「へびつかい座です。」
すぐに、訂正が入った。
声で名波先生だということが、すぐに分かった。

私は小声で「すいません」と横に気配がある、先生に向かって謝る。
先生も小声で・・・
「なんだよ。個人授業の甲斐がないなぁ。」
と返した。


「カノープスは見えますか?」

カノープス・・・?おそらく恒星の名前だろうけど、初めて聞く名前だった。

「カノープスは残念ながら、見えません。」
先生は即答した。

「アクルクスは?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫