《MUMEI》

「・・・本日は北半球の夏の星座ですので、アクルクスは見えません。」

先生はさっきまでの優し気な声ではなく、とても事務的に返答をした・・・。

「何の星ですか?」
私は小声で尋ねた。
聞こえなかったのか、先生からの返答はなかった。


なんとか無事に、ナレーションが終わり、電気がパッと点いた。変な質問をして、先生を不機嫌にさせた子を見てやろうと、辺りを見渡す。

「かなで!!」

例の声の主から元気に呼ばれ、そちらに目をやると、見慣れた顔がそこにあった。

「ソラ!?」

彼女は私に駆け寄り、私を抱きしめた。久しぶりの感覚に込み上げてくる。

前の学校での大親友、橋本想良だった・・・。

「来てくれたの?」
「そうだよー。奏、全然連絡くれないんだもん。会いに来ちゃった。」

私は携帯がなかったため、あちらの学校をやめてから、ほとんどソラに連絡していなかった。

変わらずに優しくて、可愛いらしいソラの表情に、懐かしさから涙が出てくる。
「百花に聞いたの?」

百花とソラも小学校からの親友で、百花は私に替わり連絡をとっていた。

「百花が、次のナレーション、奏の番だからって教えてくれて、変な質問してやろうと思ったの・・・」

ソラが私の横にいる先生の方をちらっと見た。

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