《MUMEI》

下から2、1。
ゴール下からの2対1のこと。
ポジションシュート。
3対3。


少人数ならではの練習が続いた。


せっかくのオールコートがもったいない気もするが、少人数ではハーフコートでの練習が精一杯だ。


「なんかもっと試合形式の練習やりたかったな〜。」

珍しくヤマが練習に愚痴を溢した。


「まぁしょうがないね。この人数じゃ。キーパーも1人しかいないし。」


「10人じゃな〜。」


ハンドボールは7対7で行われるスポーツだ。
マイナースポーツってこともあって、人数ギリギリのチームってのは珍しくない。


もちろん強豪のチームなんかは、大人数が揃っている。


中学でのハンドボール人口はさらに少なく、そのため中学時代からの実力者のほとんどは強豪校に持っていかれる。


ヤマがうちの高校に来たのは奇跡に近い。


「強豪校でやるとハンドボールが嫌いになりそうだったから。」


何年か前にヤマがそう言っていたのを覚えてる。


「ヤマト、小太郎。お前達まだやれるか?」


先生が話しかけてきた。


「当然。」


とヤマ。
僕の意見は聞こうともしない。
まぁ同じ答えだけど。


「じゃあ残り10分4対4付き合ってくれ。」


「4対4?」


「いいですけど、ポジションは?」


通常7対7のところを4対4で行うわけだからポジションは限られる。


「ヤマトはエース45。小太郎はポストやれるか?」


ヤマトの正ポジションは左45、別名エース45。
つまり普段通りのポジション。


僕はホントは左サイドなんだけど、4対4の場合サイドはいらない。まぁポストもできるからいいけど。


「いいですよ。」


練習の残り時間は20分程しか残っていなかった。

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