《MUMEI》

「よ〜し。柔軟して片付けしろ〜。」


「は〜い。」


後輩たちが柔軟を始めた。


僕とヤマは片付けとか面倒なことはしたくなかったから、さっさと着替え始めた。


「疲れた〜。久々やるとシンドイな!!」


「いや、な!!とか言われても、僕久々じゃないし。毎週ちゃんと練習してるし。」


「俺は久々なの!!」


とりあえず後輩の前で、このチームのダメ加減を話すつもりは僕にもヤマにもなかった。


さっさと着替えて学校の敷地外へ行く。


タバコ吸いたかった。
敷地内は禁煙だから。


タバコ吸ってたら、先生が来た。
もう卒業したから関係ないっしょ。


「ヤマト、小太郎。今のチームどう思う?」


「?」


先生がそんなこと聞いてくるなんて意外だった。


ヤマが口を開く。


「まずあの少人数じゃ練習内容はしょうがないにしても、全体的にレベルが低いですね。ほとんど未経験者でしょ?」


それは僕も思った。


「うん。まあな。夏の大会が終わった後、今の2年生ほとんど辞めたんだ。残ったのはユキヒロだけだった。」


つ〜かそれ何なんだよ。
何が起こったわけ?


そう聞きたかったけど、なんとなく聞きづらい雰囲気だった。


「でもな。ユキヒロが何人か集めてきてやっと今の人数にまでなったんだよ。」


「へ〜。」


そんな集めて来たから人数増えたとかいう話はどうでもよかった。


1番聞きたいことを話そうとしてないことはなんとなく感じてたから、あえて何も聞かず、でもやっぱり気になるっていう心境から、流してしまった。


「キーパーはよく見つけて来ましたね。あいつは上手いと思いますよ。」


ヤマ。
ナイスフォロー!!


「あぁ、村木か。あいつはな。体育の時間にバスケしてるとこ見てユキヒロが見つけて来たんだ。」


バスケ?
何でバスケでスカウト?


「45のヤツは?あいつはシュート早かったけど、判断力が乏しいというか…まだまだ実戦で使えるレベルじゃないと思うんですけど。」


ヤマ。なかなか厳しい意見を言うね。


「あぁ、あいつは…」


先生が喋ろうとしたのを遮って僕が口を開いた。


「野球部出身なんでしょ?」


「?、あ…あぁ。なんでわかったんだ?」


「?、なんでわかったのクロ?」


「なんとなくね。つかさヤマ。明日も練習来ない?」


「お!!い〜ねクロ!!燃えてきた?」


笑顔でヤマが言う。


「う〜んどうかな?ちょっとだけ燃えてきたかも。」


僕も思わず笑顔に。


「先生。いいですよね?」


「もちろん。」


「んでお願いあんすけど。」


「何だ?」


「明日試合しません?」

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