《MUMEI》 赤くなる私に、薫子さんは花のように微笑んだ。 「男性陣は写真のインパクトが強すぎて、気付かなかったけどね」 「公表しないんですか?」 「私は別に構わないけど、克也がね。 皆に冷やかされるから、内緒がいいんですって。 …秘密の関係も結構楽しいわよ」 「私は、堂々とがいいです」 琴子が口を挟んだ。 「和馬君は、モテるものね」 薫子さんの言葉に、琴子は無言で頷いた。 その時。 「これより、パン食い競争を開始致します」 瞳さんの声がスピーカーから聞こえた。 「あ、ほら、応援しないと」 私が指を差すと、克也さんと和馬は同じ一組目で、スタートラインに立っていた。 薫子さんと琴子は大声で応援せず、静かにそれぞれの想い人を見守っていた。 「和馬さんって足は早いの?」 私の言葉に琴子は頷いた。 「でも、この競技は『運』も大切だから」 「『運』…ですか?」 私の言葉に、薫子さんは頷いた。 私と琴子は、二人揃って首を傾げた。 その時。 パァン! スタートのピストルが鳴った。 「おぉ、和馬選手、飛び出しました!」 結子さんが実況する。 前へ |次へ |
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