《MUMEI》 ◇◆◇ 「───────」 知らぬ間に、夜が明けていた。 まだぼんやりとしながら、昨晩、黒蝶が寝床まで運んでくれたのを朧気に思い出す。 (そういえば黒蝶は──‥) 徐に身体を起こし、咲弥は外を眺める。 風が吹いていたが、さほど寒さは感じなかった。 一枚羽織り庭へ出ると、先に起きていた黒蝶が栗の木に凭れていた。 おはよう、と咲弥が声をかけると、黒蝶はにっこりと笑い、挨拶を返した。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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