《MUMEI》 ◇◆◇ 「草薙は──今日も陰陽寮に籠ってたの?」 「‥‥‥‥ああ」 草薙は夕空を見上げたまま呟いた。 遠い目をして。 咲弥はきょとんとして彼を見つめていたが、ふと空に目をやる。 「───────」 烏が、梢から飛び立った。 ばさばさっという羽音が耳に残る。 「ねぇ草薙」 「‥‥‥‥?」 「明日も早いの?」 「‥‥‥‥ああ。すまんな」 「ううん。ただ、黒蝶も心配してたみたいだから──」 「‥‥‥そうか」 「──おーい、どうしたんだー?」 黒蝶が呼びかけたので、二人は邸へ入った。 外では、絶えず風が草木を揺らしている。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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