《MUMEI》 ◇◆◇ 咲弥は日記を綴りながら、過ぎた日々をぼんやりと思い起こしていた。 暗くなってきた事に気付きふと外を見ると、彼方の夜空に月が浮かんでいた。 吹き抜ける風は遠くへと秋の便りを運んで行く。 「‥‥‥‥‥‥」 「咲弥、月見てるのか?」 「うん。黒蝶もどう?」 咲弥に頷き、黒蝶は上を見上げる。 「お、明日は満月だな。だいぶ丸くなってきた」 「曇らないといいけど‥」 不安げに咲弥が呟くと、黒蝶が彼女の肩に手を置く。 「大丈夫さ、心配すんなって」 すると咲弥は安堵したらしく微笑んだ。 夜の闇が、ゆっくりと黒い帳を下ろしてゆく。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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