《MUMEI》

遠慮気味な私の言葉に対して太一は不思議そうな顔をする。


「何がまずいの?」


「え?まずくないの?」


今度は私が聞く。


「だから何が?」


何が?って・・・


しかし話の流れから言わざるをえないので、渋々言った。


「だって・・・津田沼の彼女に悪いじゃない・・・」


私がそう言った瞬間、太一は大笑いした。


「何それ!?もしかして美幸情報??」


相変わらず太一はお腹を抱えて笑っている。


「何がおかしいのよ」


言いたくもないことを言ったのに、それをこんなに笑われるなんて・・・


そして太一は笑いを堪えながら言った。


「それ美幸勘違いしてる。美幸が駅で見たのは俺の従妹だよ」


「従妹????」


あまりに意外な真実に気が抜けてしまった。


「実は母方のばあちゃんが入院しててさ・・・」


「津田沼に?」


太一は「うん」と頷いて話を続ける。


「その日は偶然従妹も来てて、一緒に帰ろうとしてたんだよ。その帰りに美幸と駅で会ったってわけ」


なんだ・・・従妹か。


「お前ら俺に新しい彼女が出来たとかって騒いでたんだろ!?」


図星


「女は噂好きでやだねぇ」


と言いながら太一は相変わらず笑っていて、私も何だか気が抜けた分面白くて二人で大笑いした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫