《MUMEI》 真相「こんな人気の無い場所に呼び出すなんて…愛の告白か?」 「違うわよ」 孝太に向かって私は瞳さんから借りた『昔の孝太の写真』を見せた。 「…思い出したのか」 「別に、忘れてないし」 (変わりすぎて、わからなかっただけだし) 「本当か?」 孝太の言葉に私が頷くと、孝太はものすごく嬉しそうな顔をした。 「変わったね、孝太さん」 あの頃の孝太は無口で無愛想だった。 「…お前に会ったからな」 「嘘」 一年間、孝太と接していたが、孝太はいつも同じだった。 「本当さ。じゃなきゃ、俊彦に『女性の為の靴屋をやるんだ』って言われて、『シューズクラブ』にも来なかったし 麗子に『かっこよくしてあげるから』って言われて大人しく従わなかった。 …ブレスレットの次は、ボロボロのスニーカーで頑張ってたお前に、綺麗な靴をプレゼントしてやりたかった。 自信が無くて、『好きだ』と言えなかった…お前に」 そう言って、孝太は私の手をそっと握った。 「私は…」 『孝太さんとは付き合えない』と 言おうと思った。 言わなければならないと思った。 なのに。 「今はまだ聞きたくない」 前へ |次へ |
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