《MUMEI》

◇◆◇

 草薙が大内裏へと向かって行ったので、邸は咲弥と黒蝶の二人きりになった。

 いつものように髪を梳いてもらい庭に出ていた咲弥は、戻ってくるや否や筆を取り日記をしたため始めた。

「何かさ、まるで暦だな」

「‥‥?」

 咲弥は耳に入ってきた黒蝶の声に顔を上げた。

「暦‥?」

 ああ、と答え、黒蝶は咲弥に笑いかけた。

「───────」

 咲弥はきょとんとしつつも笑い返し文机に向き直ると、すらすらと紙に筆を走らせる。

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