《MUMEI》 ◇◆◇ 趣を漂わせた平安京。 しんみりとした風情。 大内裏へと続く朱雀大路は以前歩いた時とはまるで別の道であるかのように、咲弥には思えた。 右へ折れ壬生大路へ出ると、その道もまた秋の色に染まっている。 ゆっくりと足を運びながら過ぎ行く風景を眺めていると、枯れ葉が一枚、咲弥の元にはらりと落ちてきた。 「────────」 手に取りそれを見つめる。 「どうした?」 「あのね、落ちてきたの」 咲弥は茶色く染まった葉を、嬉しそうに黒蝶に見せる。 ほんの些細な発見であっても、彼女にとっては嬉しい事なのである。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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