《MUMEI》
怖いって!
ガチャガチャガチャ


「何してんだ?」


「キー入んね〜!」



何やってんだと言わんばかりに隆志はキーを差し込んでくれ、そのままエンジンをかけた。



つか運転席にいる俺に崩れ倒れながらするもんだから…広い背中に一瞬めまいを感じた。



「―――惇」

「少しだけ…」



覆い被さってギュッと抱きつく。



教習所以来の運転に対する緊張、不安。


プラス惚れた奴にくっつきたい欲求!



「たかし〜!ダメ?運転不安…」


出来るだけ甘えた声で訴える。



だって運転もイヤだけどこんな今から実家に行くのは!
兄貴にマジで会いたくねーし…


最近兄貴は、一人暮らしやめて実家に戻ったらしくて…

おかげで余計実家に帰るきっかけをなくしている状況な俺。



つか、隆志付きなんて余計あり得ね〜!!



すると隆志は起き上がり俺を胸に引き寄せた。



「隣に俺が居るんだ、安心しろ」




「―――はあ」


――なんか観念するしかなさそうで……






おっかなびっくりアクセルを踏み発車させる。

「俺方向音痴だから東西南北分かんないからさ…」

「大丈夫!俺が教えるから」



あーもう怖い!



めちゃめちゃ行きたくねえ!




おっかなくてスピード全然出せねーし信号で止まると次はアクセル右でちゃんと踏まなきゃとか考える。



ああ!都バスが目の前で停まった!



「おい、右にウインカー出して前に行けよ」


「ムリ〜!後ろ来てる〜!」


「平気だ、タイミング見て!」



「ヤだよ〜〜〜!」



そんなやり取りしてたらバスが動き出した、はあ…助かった。



「なー、バス停まるたんびに一緒に停まるつもり?」



「だ、だって゛ー!」



もうハンドル握る手汗でびっちょり!ドリンクホルダーのジュース飲む余裕もない。



まだ発車して10分経ってねーのに、まだ幾等も移動してねーのに頭くらくらしてきた。



「♪♪♪♪♪」


「惇、携帯なってる」


「出れっかよ〜!相手誰?見て!」



隆志は俺のバッグから携帯を出し

「――実家」
「…兄貴かな」


携帯が鳴り止む。かけなおしする?って聞かれて後にするって言った。


さっき出る前に、隆志に無理矢理兄貴に電話させられたんだけど出なかったから、きっとかけなおしてくれたんだろう。


あの時、正直出なくてほっとしてたんだけど…







俺あの人に嫌われてるから。

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