《MUMEI》

(辛いのは、私じゃなくて、麗子さんなのに…)


私は皆から逃げるように、こんな所でメソメソしている。


麗子さんの冷静な解説が聞こえてくるたび、私は自分の弱さが嫌になった。


誰も私を探しに来ないし、運動会は順調に進んでいく。


きっとそれも、麗子さんか孝太の気遣いだろうと思った。


私は罪悪感を感じながら、公園のベンチに座って、運動会の様子を聞いていた。

「さぁ、最終種目です。司会は私・丸山倫子に変更させて頂きます。

尚、一つ男性陣にお知らせがあります。

『クローバー』の伊東蝶子は、体調不良の為にここにはおりません」


(そういう事になったんだ)

私はぼんやりしながら倫子さんの声を聞いていた。


それから、スタートのピストルが鳴った。


「いよいよ始まりました、最終種目・借り『者』競争!
今、先頭が紙を開きました」


倫子さんは実況も行っていた。


「指定されたアクセサリーを着けた女の子の元へ、各選手走ります!」


(あぁ、そういう事ね…)


私は冷めた気持ちで倫子さんの声を聞いていた。


予想通り、和馬は琴子を、克也さんは薫子さんを、春樹さんは瞳さんを選んだ。

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