《MUMEI》

「カノープスも、アクルクスも南半球で良く見える星座だよ。」

南半球・・・ 。

「良く知ってるね?」
私はとても驚いていた。
先生が変な態度になったのは、これが原因かもしれない。でもこれだけで?

「あれ?奏、知らなかった?うちのおじいちゃん、天文学の博士で、オーストラリアに天文台を持ってるの。子供のころ何回か連れてって貰ったんだ。」


そういえば、夏休みにオーストラリアに行くって、良く話していたことを思い出した。ソラのおじいちゃんが天文学の博士か・・・。
「アクルクスは南十字星の1番星で、あれを見た時は本当に感動したな。」
アクルクスは南十字星の恒星なんだ。私も覚えておこう・・・。

「今の先生もね、天文学が専門なんだよ。南十字星をみたいって言ってた。」

「へぇ。そうなんだ。カッコイイ先生だね。」

「うん。私の好きな人。」

ソラは大きな目を見開いて、私の方を見た。その目が『本当に?』と訴えているようだった。私が微笑むと、ソラも目を細めた。

「ちびっ子のくせに、恋なんかしちゃって。」
茶化すように言う。
私は恥ずかしさを隠すように、自分の手で自分の頭を撫でた。

そっか。これが、恋。
初めて気が付いた気がしていた・・・。

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