《MUMEI》 衝撃私が商店街に辿り着く前、笛が一度鳴った。 ? ため息のような、悲鳴のような女性の声が聞こえた。 次に、二回笛が鳴った。 今度ははっきりと悲鳴が上がった。 私は 声も出なかった。 そこに広がる光景に。 寄り添う男女の中に いつまでも絡み合う男女。 「そこ!もういいわよ!」 倫子さんの大音量の声に、ミニスカートの女性はうっとりとした顔で、唇を離した。 女性は相手の男性に 俊彦にまだ抱きついていた。 俊彦の顔は、私からは見えなかった。 私に見えるのは 勝ち誇るように微笑む女性の顔だけだった。 私は、呆然としていた。 「…蝶子?」 そんな私に最初に気付いたのは、孝太だった。 私はハッとした。 (最低だ…) ここに来たのは孝太と麗子さんの様子を見るためだったのに。 恥ずかしくて、麗子さんの顔が見れなかった。 そして、私は その場から全力疾走で逃げ出した。 後ろから、沢山の視線を感じた。 …俊彦の声も聞いたような気がする。 しかし、無意識に公園に戻ってきた私に追いついたのは …孝太だけだった。 前へ |次へ |
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