《MUMEI》
・
――気がつけば俺はまた一人だった。
どうやら意識を失っていたらしい。
「―くそ、何なんだよ一体!」
ガツンとコンクリートを殴る。
屈辱的で悔しくて情けなくて―――
涙も出やしない。
何でこんな事すんだって聞いたって
「分かんないの?」
って言うだけだった長沢。
いっぱい頭撫でられながらあちこち舐めまわされて今回は俺から欲しがる程に追い詰められた。
俺はやっとの思いで壁に寄りかかり大きく息を吐いた。
――なんか切ない…
なんで居なくなんだよ〜!
なぜか無性に抱きしめられたくて堪らない。
――おかしい、俺アイツのせいでおかしくなった!
ギギ…バタン!!
「聖、起きたんだ?」
「こ、こら長沢!どこ行ってたんだよ」
ハイってブリックパックのイチゴ牛乳を渡された。
「エッチしたら喉渇いちゃってさ〜」
「―――そうですか」
溜め息つきながら遠慮なく飲み始めると何やら視線を感じる。
「――何だよ」
ムギュ〜ッ!!
「う゛ああ゛っ!!」
「あ〜もう!イチゴ牛乳飲む聖めっちゃ可愛いなあ!
大好きっ!も〜離さない!!」
―は?
今なんと?
しかもコイツ俺を名前で呼んだ!
――……!
「な!なにしてんだ長沢!もういい加減にしろ〜〜!」
「いい加減にしませ〜ん!聖っ!もう可愛いくって堪んね〜っ!」
グニグニ頬擦りされるわ抱きしめたまま揺すられるわで!
「聖すきだあ〜っ!」
「な〜が〜さ〜わ〜
は〜な〜せ〜っつ!!」
――暫くの攻防戦の末また押し倒されて…
―― どうやら長沢は
俺が大好きらしい。
・
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫