《MUMEI》

◇◆◇

「あれ、あいつ帰ってたのか」

「うん、そうみたい」

 咲弥はまだ草薙の去って行った方向を見つめている。

 黒蝶は安堵したのか、大きく一つ息をついた。

「ま、無事だったんなら良かったな」

「うん」

 咲弥は頷き、ふと庭へ目を向ける。

「どうした?」

「ねぇ黒蝶」

「ん?」

「お庭に行ってもいい?」

「ああ、いいけど‥でも、もう暗いぞ?」

「少しだけ。蕾がどうなってるか見てみたいの」

「分かった。じゃあ、あたしも行くよ」

「いいの?」

「ああ。姫を守るのが務めだ‥って、前にあいつに言われたからさ」

◇◆◇

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