《MUMEI》 「何て、思うわけないでしょう? …そんな顔しないの」 麗子さんは混乱する私の頭を軽くポンポンと叩いた。 そして、私の乱れた着衣を整えて、涙も拭いてくれた。 「来るのが遅くなってごめんね。 『私が二人を追いかける』って俊彦を説得してたから」 「ど…して」 昼間、あんなに怒っていたのに。 日が落ちたので、公園にたった一つの電灯がともった。 麗子さんは、少し困ったような顔をしていた。 「…そろそろ、この辺の人達が帰ってくるから、移動しましょうか。 話はそこでするわ。 …孝太も来なさい」 「言われ無くても」 孝太はフラフラと立ち上がった。 それから、私は麗子さんに支えられながら、麗子さんのお店へ 『岸美容室』へ移動した。 孝太は無言で後ろから付いてきた。 前へ |次へ |
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