《MUMEI》 通路梯子を降り切ると、狭い通路が右へと続いていた。 低い天井には少し暗い電灯が間隔をあけて設置されている。 「こっちだ」 レッカが先頭に立って進んでいく。 「ここって、もし出入口が塞がったらどうするの?」 羽田が不安そうに聞くとレッカは笑って「大丈夫」と言った。 「出入口はあちこちにあるんだ。街全体の地下にここみたいな通路が張り巡らされててさ。ま、軽い迷路みたいな感じで」 「それ、迷わないの?」 凜の言葉にレッカは「そりゃ、迷うさ」と、まるで当たり前のように答えた。 それと同時に三人は、通路が二本に別れている場所に出た。 「大丈夫?」 「平気だって、先生。ほら」 言ってレッカが取り出したのは、一枚の地図だった。 「迷わないように住民一人一人に地図を渡してあるんだ。地図が読める奴は大丈夫。読めない奴と方向音痴は迷うけどな」 「そうなんだ。よかった」 「で、どっち?」 「えーっと……?」 レッカは地図上を指でなぞりながら、現在の位置を確認する。 「んー、左っぽい感じ!」 レッカはそう言うと一人頷いて歩き出す。 凜と羽田は自然と顔を見合わせた。 「ねえ、あれ、大丈夫かな?」 「……さあ」 二人は小さく息を吐くと、レッカの後に続いて歩き出した。 それからいくつかの分かれ道を、頼りないレッカの指示に従って進んでいくと、頑丈そうな扉が前方に見えてきた。 「あ、合ってたんだ」 思わず羽田が言うと、レッカは不満そうに振り向いた。 「なんだよ、それ?」 「あ、ごめん」 レッカはわずかに頬を膨らませたが、何も言わなかった。 そして扉の取っ手を掴み、押し開いた。 ドゴン、という音が通路に響く。 扉の先には、大きな部屋が広がっていた。 前へ |次へ |
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