《MUMEI》

私の言葉を聞いた太一は訝しそうな目つきで、


「どういうこと・・・?」


と聞いてきた。


私は太一の様子をもう少し見たくて、小出しに話をした。


「私が佐久間さんに殺されるとか書いてあるの・・・」


「え?何だよそれ!?」


太一が演技をしているのかどうかは、いまいち見抜けない。


「どう思う?」


逆に質問をしてみた。


「どう思うって佐久間さんには言ったのかよ?」


「ううん、言ってない」


と言いながら、太一がさりげなく私の状況を探っているのではないかと疑った。


「警察には?」


「言ってない・・・」


「なんで?」


太一はとても心配そうな顔をしている。


演技?


「とにかく早く言った方がいいと思う。今からすぐにでも警察に言おうよ」


太一は携帯を出して、電話しようとする。


「やめて!」


「なんで!!」


太一が怒る。


「だって、このくらいじゃ真剣に取り合ってもらえないでしょ?」


「でも怖いだろ!」


太一は真剣に心配しているように見えた。


「とにかく・・・もう少しだけ様子を見るわ」


私がそう言うと、


「何かあってからじゃ遅いんだぞっ!」


と太一は怒鳴り、私に背を向けてしまった。

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