《MUMEI》 俊彦に協力した女性は、『頬』ではなく、『唇』にキスしていたし、二人は抱き合っていた。 とても『ただの余興』には見えなかった。 「俊彦が馬鹿だから悪いのよ。 蝶子がいないからってボーッとしてたから。 あれは、女が一方的にやってただけよ」 「抵抗しなかったぞ、あの男は」 孝太が口を挟んだ。 その言葉に、私は落ち込んだ。 「…ものすごく、抵抗したそうな顔はしてたけど、結局流されてはいたわね」 麗子さんの言葉に、私は更に落ち込んだ。 「まぁ、それも。優勝して、蝶子と旅行行きたいからだけどね」 (え?) 私はうつ向いていた顔を上げた。 「大勢で行く、ただの商店街の旅行だろ」 「さっきから、いちいちうるさいわね」 口を挟む孝太に、麗子さんはイライラしているようだった。 「お前は俊彦の味方だからな」 「違うわよ。 私は、蝶子の味方よ」 そう言って麗子さんは私を抱き締めた。 そして 「結果として、俊彦の味方になってるけどね」 と、孝太に聞こえないように耳元で囁いた。 それから、麗子さんはすぐに私から離れて説明を続けた。 前へ |次へ |
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