《MUMEI》

俊彦に協力した女性は、『頬』ではなく、『唇』にキスしていたし、二人は抱き合っていた。


とても『ただの余興』には見えなかった。


「俊彦が馬鹿だから悪いのよ。
蝶子がいないからってボーッとしてたから。

あれは、女が一方的にやってただけよ」


「抵抗しなかったぞ、あの男は」


孝太が口を挟んだ。


その言葉に、私は落ち込んだ。


「…ものすごく、抵抗したそうな顔はしてたけど、結局流されてはいたわね」


麗子さんの言葉に、私は更に落ち込んだ。


「まぁ、それも。優勝して、蝶子と旅行行きたいからだけどね」


(え?)


私はうつ向いていた顔を上げた。


「大勢で行く、ただの商店街の旅行だろ」


「さっきから、いちいちうるさいわね」


口を挟む孝太に、麗子さんはイライラしているようだった。


「お前は俊彦の味方だからな」


「違うわよ。
私は、蝶子の味方よ」


そう言って麗子さんは私を抱き締めた。


そして


「結果として、俊彦の味方になってるけどね」


と、孝太に聞こえないように耳元で囁いた。


それから、麗子さんはすぐに私から離れて説明を続けた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫