《MUMEI》

「太一…ごめん…」


相変わらず私に背を向けている太一に言った。


「愛加は分かってない」


「分かってるよ」


私のことを心配している分だけ腹を立てているのが分かった。


「分かってねぇよ」


太一はこちらを向き、少し私を睨み付ける。


「俺がどんな気持ちで心配してるかなんて知らないくせに…」


そして唇を噛み、


「いつもお前は俺を頼ってくれない…」


そう呟いた。




私は何を言ったら良いのか分からずコーヒーに手を伸ばす。


「それ……」


太一は私が手にしているカップを眺めて、


「愛加が来るから、会社の先輩に美味しいコーヒーを教えてもらって、昼休みに買いに行ったんだ…」


「そうだったんだ……ありがとうね」


そう言ってコーヒーを一口飲んでカップを置いた。


少しの沈黙が流れ、太一が静かに言った。



「愛加は……俺と別れてから半年、どうだった…?」

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