《MUMEI》 ◇◆◇ 「ん、どうしたんだ? 行くんだろ?」 「‥‥‥‥ああ」 ぼうっとしてしまっていた事に気付き、草薙は我に返った。 そして、大内裏の方へと歩き出す。 咲弥、黒蝶の二人はその背を見送っていた。 草薙の姿が完全に見えなくなると、黒蝶が一つ息を付いて頭の後ろで手を組んだ。 空が眩しい。 手を伸ばしたら、たゆとう雲に、届きそうな気がした。 黒蝶がそんなたわいもない事を考えていると、咲弥が彼女に話しかけた。 散歩に行きたいのだと言う。 黒蝶は同意した。 彼女もまた、同じ事を考えていたのである。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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