《MUMEI》

◇◆◇

 大内裏へ赴いたついでにと、黒蝶は咲弥を祇園へ案内した。

 八坂神社の前まで来ると、咲弥はしげしげとその社に見入る。

 白けた屋根から時折雪の塊が落ちる以外は音もなく、辺りはしいんと静まり返っている。

 随分と趣深い所だ、と咲弥は思う。

「────────」

 彼女は暫く無言のままその場に佇んでいた。

◇◆◇

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