《MUMEI》

◇◆◇

 お参を済ませ社を後にした二人は、祇園の町中を漫ろ歩いていた。

「───────」

 咲弥はきょろきょろと忙しない。

 普段とは違う趣が、やはり珍しいのだろう。

 暫くすると、思いの他遠くへ来てしまった事に気付き、咲弥は立ち止まった。

「ん、咲弥、どうした?」

「ううん。ただ、こんなに遠出をしたのは久し振りだったから」

「ああ、そういえば‥貴船に行った時以来だよなぁ」

 黒蝶は空を見上げながら呟いた。

 そしてふと、咲弥に向き直る。

「疲れたか?」

「ううん、大丈夫」

 こんな風に当てもない遠出をするのも、咲弥は楽しいのである。

◇◆◇

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