《MUMEI》

「あぁ佐久間さん・・・おはようございます」


「昨日、用事があって鎌倉に行ったんだ。で、お土産」


あの人と鎌倉に・・・


「そんないいのに・・・」


太一が遠慮すると


「お土産って言いながら、実は頂き物。たくさんもらっちゃってさ。だからおすそ分け」


「あぁ・・・そうなんですか。じゃぁ遠慮なく頂きます」


太一は受け取ったようだ。
そして・・・


「ちょうど愛加もいるし、二人で食べます」


と言った。



「え・・・愛加・・・?」


少し驚いたような佐久間の声が聞こえた。


「はい。昨日から泊ってるんですよ」


「・・・・・・へぇ・・・あ、二次会の幹事を一緒にやるらしいね・・・」


佐久間がぎこちなく言う。


「そうなんですよ。で、昨日から二人で準備してて・・・」


「そっか・・・」


心なしか佐久間の声に元気がない。


「ちょっと愛加も呼びましょうか?」


太一が私を呼ぼうとする。


「あっ、いや、いいよ」


「そうですね・・・愛加、まだ真っ裸で寝てるから」


太一は笑いながら言うが、佐久間の返事はない。


「そうそう俺たち、やり直すことにしたんです」


「・・・・・・・・良かったね」


「佐久間さんのお陰です。佐久間さんがいなかったら再会できませんでしたから・・・」


「あぁ・・・」


表情は見えないが、佐久間のしょんぼりした顔が目に浮かんだ。


「それじゃ・・・・そろそろ俺戻るね・・・」


「あ、はい。わざわざありがとうございました」


そして太一は部屋の中に戻ってきた。

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