《MUMEI》 やっとのことで着替えを済まし、体育館へ向かう。 「…あれ!?かなめ、いつの間に着替えたの??」 途中で会った青木に問われる。 「えーっと…さ、さっき急いで着替えたのよ」 「へえ…」 さして気に留めることも無く、青木はまた歩き始めた。 「…あれ、」 青木が突然立ち止まる。 「…椎名くんどーしたんだろ??」 「え??」 青木の視線を追うと、すでに体育館に集まっている男子の中に、『おれ』―…蓬田の姿が無かった。 …蓬田、どーしたんだ…?? 男子の集団に歩み寄る。 「ちょ、かなめ!?」 「ちょっと聞いてみる」 おれは焦る青木にそう言うと、周りの男子と談笑している瀬田に声を掛けた。 「おい、瀬田」 男子が一斉に顔を向ける。 「…え、おれ??」 間抜けな顔で、自分を指差す瀬田。 …お前以外に誰がいんだ。 「おう。あのさ、よも…じゃなくて、椎名、くん??…どこ行きやがった??」 驚いて顔を見合わせる男ども。 ―…喋り方、マズかったか?? 「…えーと、椎名くんは、どこに行ったか分かる、かしら??」 言い直す。 「え?…あ、えと、保健室行ったけど―…」 訝しげな表情を浮かべ、答える瀬田。 「―…保健室!?」 …怪我でもしたのか!? 「うん。なんか、腹痛いとかで―…」 「―…わかった、ありがとな!」 おれは、瀬田に礼を言うと、走り出した。 「え、かなめ!?―どこ行くの!!?」 「ちょと用事―!!」 青木の声を振り切って走る。 保健室!? 腹イタって… 大丈夫かよ!!? 前へ |次へ |
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