《MUMEI》

◇◆◇

 白い灰。

 それの燻る音が微かに聞こえる。

「ねぇ黒蝶」

「ん?」

「腕‥寒くない?」

 咲弥は黒蝶の左腕を気にしている。

 さらけ出されたそれは、あまりにか細く、白い。

 だが黒蝶は気にしない。

「もう慣れたからな」

 そう言って笑う。

 咲弥は安堵した。

 その刹那、咲弥は黒蝶の二の腕に布が巻かれていない事に気が付いた。

 そこには、長らく隠されていた蝶の刺青がくっきりと浮かび上がっている。

「黒蝶、それ───」

「ああ、もう隠すのはやめたんだ」

 その表情に、もはや戸惑いは微塵もなかった。

◇◆◇

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