《MUMEI》

もしかして、怒ってるのかな…!?

勝手に抜け出してきたから―…



足音が近づいてきて、カーテンの向こうで止まる。



シャッ、というカーテンの音と共に、



「…蓬田…??」



心配そうな、声。



「…寝てんの」



ギシ、とベッドのきしむ音。

椎名くんがベッドに腰掛けたのがわかった。



何も答えられずにいると、また椎名くんが口を開いた。



「…腹、大丈夫かよ?
―…もしかして、弁当にヘンなもん―…」


「…おいしかったよ!!」



がば、と跳ね起きる。



「うわ、」



驚いて、椎名くんが体を少し強張らせる。


――仮病がばれてもいいや。



「お弁当、すっごくおいしかった!!ありがと!
…あ、あと肉じゃがも、すごく」


「…おまえ、腹イタは…??」



椎名くんが、訝しげに訊いてくる。


私は、椎名くんに問いただされ、仮病だということを白状した。

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