《MUMEI》
日高視点
「な、俺って可愛い?」
「――――――――――――…は?」
佐伯は真剣な表情で俺を見据えている。
つか片手に握るうまい棒がまたなんともギャグだ。
「――俺は男を可愛いと思う趣味はない」
「―はあ〜、そうだよな、そうなんだよな〜」
佐伯はパタッと机に突っ伏した。
「…あれ?うなじ赤くなってる…――――
!!お。オマエっ!
それ!き、キスマークじゃね〜かよっっ!!」
ガタガタッッ!
「はあう゛!!」
佐伯は真っ赤な顔で突拍子もなく立ち上がる。
俺の叫び声と佐伯の派手なリアクションでいっせいに周りがこっちを見た。
「――佐伯?」
俺は出来るだけ小さな声で話かける。
つかコイツ今にも泣き出しそう。
握っていた大好物のうまい棒、ぐずぐずになって床に散らばった。
――なんかキスマークの事簡単に突っ込める雰囲気じゃなさそう。
いや、でも気になるし……
躰に悪いからやっぱ聞こう。
俺は好奇心を押し殺し、出来るだけ神妙な面持ちで佐伯を見上げた。
「――な?場所変える?」
佐伯は力なく頭を左右に振り、大人しく座った。
そして俺に目線も合わせずうつ向いてしまった。
「――さっき体育んときいなかったけど…
どこ行ってたの?」
佐伯は弾かれた様に俺に視線を合わせた。
「あ…あの……」
――分かりやすすぎだぜ佐伯…
そんときに何か…
あったな?
「…誰かに可愛いって言われたのか?」
――ビンゴ。
限界まで茹で蛸と化した佐伯聖。きっとキスマークもその相手だろう。
――つかここは男子高。
――男子高だよ。
親友が……確かに可愛いらしい俺の大切な親友が男に……
「――そういや体育ん時長沢もいなかったけど…」
ゴツン!!!!
佐伯は、勢い良く机に崩れた。
「マジっすか〜」
――犯人は長沢かい!!!!
「マジっすか…」
佐伯は起き上がる気配もなく机に突っ伏している。
なんとなく長沢の方を見ると…
「!!!!」
―― 俺を般若よろしく睨みきかせてメンチきっている!!
――こ、これは!!
……。
チ〜ン…
「――佐伯……」
突っ伏したままの佐伯に向かって俺は心の中で心を込めて合掌した。
・
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫