《MUMEI》

「…かっ、か…香織さん!?」



隣で、蓬田が叫ぶ。


―…香織さん…??




「い、いつから―…」



息をのみ、蓬田が問いかける。



「いつから??…そーねえ…10分ほど前、かしら?」


「「10分!?」」



ハモった。



10分前って…


…会話、聞かれてたか!?



『香織さん』と呼ばれた美女をまじまじと見る。



…話を聴いてたようには、思えないな。


その落ち着いた笑顔からは、そんな様子は覗えない。



「…ねえ、ようちゃん」



ふいに、美女が呟く。


…ようちゃん…??


おれが首を傾げていると、



「は…っ、はい!!?」



隣の蓬田が応えた。



すると、美女が驚いたように、少し目を見開いた。

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