《MUMEI》 秘密あの後、文化祭は特に問題もなく無事に終了した。 帰り際、たまたま廊下ですれ違った時には、名波先生も普通に戻っていた。 私を呼び止めて、上履きの心配をしてくれた。私は、上履きくらいお小遣で買えます。と強がった。 先生は笑って私にデコピンをして、そのまま通り過ぎて行った。 ・・・今日は文化祭の振り返え休日で、新しい上履きを買うために、以前、制服を作ってもらった洋介さんの洋品店へ向かっていた。 お店に入ると、誰もいない様子だったので、「すいません。」と大きな声で叫んだ。 中から2歳くらいの小さな男の子が出て来た。私を見つけて、笑顔で駆け寄ってくる。 「翔太。こらこら。」 「洋介さん、こんにちは。」 気付いてなさそうだったので、自分から挨拶をした。 「あ、奏ちゃん?」 洋介さんはちびっ子抱き上げて、驚いたように私を見ている。 「息子さんですか?」 「あはは。似てるだろ?」 確かにそっくりだった。親子というのは、こうも似るのかと思うと、遺伝子の不思議を感じてしまう。 「実は、姉貴の子。」 「え?すごく似てる。」 甥っ子と叔父がこんなにも似るんだ・・・意外な真実を思い知らされた。 「なんか奏ちゃん、髪の毛下ろすと少し、大人っぽく見えるねぇ。」 前へ |次へ |
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