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《MUMEI》 ◇◆◇ 暫し咲弥の元を離れていた黒蝶が、僅かに表情を曇らせて戻って来た。 「──咲弥、草薙どこに行ったか知らないか？」 「いないの‥？」 ああ、と黒蝶は頷く。 「何かさ、邸にはいないみたいなんだよなぁ」 その言葉に、咲弥は不安げな色を浮かべた。 「でも、外は雪なのに──」 見えるのは雪の白、ただそれだけだ。 とても出歩ける状況ではない。 にも関わらず、彼はどこへ行ったというのだろう。 （早く止むといいけど──‥） 今はただ、それを祈るばかりである。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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