《MUMEI》 引き渡し「『話しかけないで』って言ったのは、蝶子が嫌いだからじゃないの」 夜道を歩きながら、麗子さんは私に向かって淡々と話を続けた。 私は、ただ頷きながら、それを聞いていた。 「醜い嫉妬や、単なるやつあたりをする自分が 蝶子を傷付ける自分が嫌だったの。 だから、近付いてほしくなくて言ったの。 結局、孝太が暴走したから自分から近付いたけどね」 「そのおかげで助かりました」 私が口を開くと、麗子さんは苦笑した。 「やっぱり蝶子は可愛いわ」 麗子さんは明るい口調で言った後 「だから、心配よ」 と続けた。 「蝶子は意外と無防備だし。 まだ、…トラウマ克服できてないみたいだし」 『トラウマ』 麗子さんのその言葉に私は反応した。 確かに、私は足を触られただけで未だに動けなくなる。 (もし、麗子さんが来なかったら…) 考えただけで、私はゾッとした。 「本当は、恋人がいればいいんだけどね。 …俊彦とか」 「それは…」 「二人が両想いなの、見ててバレバレなんだけどな」 麗子さんの言葉に、私は何も言い返せなかった。 「…というわけで」 ? 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |