《MUMEI》

麗子さんは走って横断歩道を渡ると、左折した。


「ま、待って下さい!」


私は慌てて後を追いかけた。


(何で、左折?)


『クローバー』は右折なのに。


麗子さんには、すぐに追いついた。


「ほら、立ちなさい」


麗子さんは、丁度、昼間運動会のテントがあった位置にうずくまる人物に、声をかけていた。


「俊彦…」


私が呟くと、俊彦は顔を上げた。


「蝶子は無事よ」


麗子さんの言葉に、私が頷くと、俊彦はゆっくりと立ち上がった。


「大丈夫?」


「う、うん」


頷く私よりも、俊彦の方が辛そうだった。


「もう、あんた達、いい加減に付き合いなさいよ」


様子を見ていた麗子さんが口を開いた。


「「それは…」」


私と俊彦が口を開くと、麗子さんは俊彦を引っ張って、何か話をしていた。


(何だろう?)


戻ってきた麗子さんは早口で私に話を始めた。


「俊彦には、蝶子はすぐには体は受け入れられないから、そこは我慢しなさいってよくよく言っておいたから。
今日は雅彦は外泊してるし、咲子さんには蝶子はうちに泊まるからって言ってあるし
とにかく!
二人で一晩よく話し合いなさい」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫