《MUMEI》

「俺、先に行くよ?電気そのままで…

どうした?」


俊彦が困ったような顔をした。


…私が俊彦のパジャマを引っ張って、引き止めたから。


(どうするの?私?)


「あ…の…」


「無理しなくていいんだよ」


俊彦は優しく微笑んだ。


「…一緒の、部屋で寝ちゃ、だめ?」


私は多分、残酷な事を言った。


側にはいたい。


俊彦が好きだ。


でも…恐い、から。


俊彦は最初、驚いた顔をした。


それから、困った顔をした。


「やっぱり、…いい」


私は俊彦から手を離した。

すると、俊彦は、私の頭を優しく撫でた。


そして


「布団を敷くの、手伝ってくれたらいいよ」


そう言って


私を自分の部屋に招き入れた。


私は俊彦のベッドに


俊彦は、二人で床に敷いた布団に


それぞれ横になった。


「…眠れる?」


私が恐る恐る声をかけると、俊彦は『頑張る』と答えた。


「蝶子は?」


「私も…頑張る」


私の答えに俊彦は小さく笑った。


「せっかくだから、少し話をしようかな?」


「…何の?」


「俺と、孝太の。
…聞いてくれる?」


「うん」


私は耳をすました

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