《MUMEI》

赤高の攻めパターンは単調だった。


クロスやポスト上がり、そして45からのロングシュート。


何本かポストへのパスが見られた。
センターからのパスは悪くないパスだった。


しかし、右45の彼。


ロングシュートを数本外した後、同じようにロングシュートを打とうとし、ディフェンスが出てきた所で、逃げ腰のパス。


通るわけもない。


結局10分経った所で8対2と僕たちがリードする展開となった。


「お前ら弱すぎだ!!」


翔太が怒鳴った。
引退したばっかりの翔太からしたら1個下のこいつらにイライラする気持ちもわかる。


「ロングシュートじゃだめだ…あのキーパー上手い…」


(今更気付いたのかよ。)


でもお前たちはそれしかできないだろ?


ガチガチで中固めてるし、両サイドはマンツーで付いてるからパスは出せないだろう。


最初っから僕たちは、


『ロングシュートを打たせるディフェンス』


をしているからね。


「クソッ!!」


ユキヒロが苦し紛れにシュートを打った。


止める恭介。


「おい!!焦んな!!」


戻りながらキレるポスト。


「手上がってただろ!!」


『手上がってた』


これはオフェンスがシュートを打たず、いつまでもパス回しをしていたり、とにかくボールを持ちすぎている時におこる『警告』だ。


審判がそれを判断し、手を上げる。


審判の手が上がってから、2〜3回のパス回しの間にシュートを打たなければ、相手ボールとなる。


※2〜3回とは審判の判断によるもの。4回の時だってあるし、パスを出さず、1人で持っている場合も相手ボールとなる。


僕にボールが来た。
いつもと同じようにワンフェイク入れる。


その瞬間。
ポストの不和さんと目が合った。


(不和さん!!)


それまでワンフェイクの後はヤマへパス。


としていた流れ。


ディフェンスもそれが一連の流れ。


と思う。


僕はヤマを見る。


その瞬間、ディフェンスの脳裏に、


『45にパス』


というイメージが生まれる。


それを…
僕は見逃さない。


45に気持ちがいっいる2枚目の目の前にパスを出す。


『目が合った』


それだけのことだが、パスが来ることを予測するには十分だ。


ディフェンスを欺いたパスを、不和さんは予測していた。


パスが通る。


サウスポーの不和さんは、左サイドの僕からのパスの場合。


そのままシュートを打ちやすい。


当然のように…


シュートを決める。


これで9対2だ。

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