《MUMEI》

センターからのパス。
ユキヒロの突破。


どちらも防ぎ始めた海南。


突破されてもキーパーが必ずしも入れられるとは限らない。


恭介の場合は尚更だ。


じわじわと点差が離れ…


17対6というところで、残り時間は2分となった。


もう時間もない。


久しぶりに…


好き勝手やるかな!!


残り時間を見て焦ったユキヒロが、ポストクロスからのロングシュートを打った。


ユキヒロがシュートを打つ。


そう思った瞬間…


僕は走り出した。


恭介なら止める。


そう思った。

そして、予想通り恭介はシュートを止めた。


「こっち!!!!」


体力の低下。


そして諦めから、ディフェンスは判断が遅れていた。


恭介のパスが来る。


向こうのコートには、キーパーとゴールしか見えない。


(あ〜、これだ。この気持ち。)


誰よりも早く走り出した僕に、誰も追い付けない。


速攻。


これがサイドの最高の仕事。


以前僕は、この仕事に最高の刺激を感じていた。


いや、今も…


忘れもしないあの時。


この仕事が奪われた時。


キーパーからパスが来る。

それまでの間に、クロは思い出していた。


それは…
高校時代のことだった。

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