《MUMEI》

「ハンドボール?」


「そ!!ハンドボール。」


「う〜ん…」


「とりあえず見学来いよ。」


「わかった。」


「じゃ、放課後迎えに来るから。」


「あいよ。」


「んじゃ後で。」


「は〜い。」


ホント言うと、やってみたい気持ちはあった。


今まで自分を欲しいなんて言ってきた部活はなかったし、何よりも、ヤマと同じ部活をやってみたかった。


午後の授業は頭に入らなかった。


いつものことだけど。
でも確実に理由は違ってた。


楽しみだった。


「…クロ!!」


「え?悪いボーッとしてた。」


「今日も遊んでこ〜よ!!」


「あ。ごめん。今日ダメなんだ。」


「またお金ないの?」


「いや、今日はちょっと。」


「ふ〜ん。わかった!!じゃあまた今度ね!!」


「うん。」


その日最後の授業が終わった。


「ヤマトくん掃除!!」


廊下から女の子の怒鳴り声が聞こえた。


「ごめん!!今日だけ勘弁して!!」


ヤマの声だ。


「クロ!!急ぐぞ!!」


何も言わず走り出した。


…笑顔で。

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