《MUMEI》

「あーちゃん、レイちゃんがそろそろくるわよ」


「あーちゃん、ゆーなッ」


「はいはい。あきふみ でいいんでしょ」


「そーだよ」


「あきふみ、楽しみでしょお」


「あぁ。レイ、男前になってるかな」


「なってるんじゃない?」


そういうと29歳の若い母親は、にやにや笑った。


こいつは何をたくらんでいる?


「そういえば、レイちゃん、約束守ってくれたわね」


「あぁ」


確かにレイは男と男の約束を守った。


10年前の約束を。


あの時、3歳だった俺らは、2つの約束をした。


レイは、絶対帰ってくる、


俺は帰ってきたら おかえり という気持ちをこめて


死ぬほど強く抱きしめてやると。


あとは俺の約束だけだ。


絶対守ってやる。


…あれ?


「母ちゃん、レイの本名ってなんだっけ?」


「あぁ。あんたら、ずっと レイ と あーちゃん だもんね」


「うん」


「まぁ、自分で聞いてみなさい」


また、にやにやしてる。


んとに、あやしいヤツ。


"ピィンポォン"


「おっ!来たわね!あーちゃん、開けてきなさい」


「あきふみ だっつうの!!」


とうとう来たか、レイ。


10年ぶりの再開に、うきうきしながら玄関に向かった。



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