《MUMEI》

あの、昼間の女性がしていたような濃厚なキスは、私にはとても真似できないから。


ほんの一瞬で、私は俊彦から離れた。


「蝶、…子?」


俊彦は、目を閉じる暇も無かった。


ただ、呆然と私を見つめ、唇を押さえていた。


「手の甲のキスのお返し…
しないと、いけないんでしょう?

昼間、もらってたから、いらないかもしれないけど」

「そんな事、…無い。

うわぁ、どうしよう、俺。
今、メチャメチャ嬉しいんだけど。

だって…

蝶子からって、初めてだし
…夢じゃないよな?

うわぁ、…いひゃい、ひゃんと、いひゃい!」


「…明日、仕事でしょう?」


俊彦は、綺麗な顔を何度も笑顔でつねっていた。


「おやすみ」


私は、俊彦に背を向けて、横になった。


「ね、ねぇ、蝶子ちゃん…」


「何にもしないって、言ったよね?」


「…足は触らないからさ。ちょっとだけ」


俊彦が、私の肩に手を置く。


「今日は、もうダメ。…疲れた」


私は本当に疲れていた。


「『今日は』って事は…
これからは?」


俊彦が、私の肩を揺すった。


「わからないけど、そのうち…大丈夫か…も…」


(眠い)

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫