《MUMEI》

「こんなロースコアゲーム久々だな。」


「…あぁ。」


リードしているとはいえ、赤高に油断はなかった。


誰もが状況を理解していたのだ。


『気を抜いたらやられる。』


毛ほどの油断も許されなかった。


後半開始直後。


泉さんが、海南のロングシュートを止め…


「こっちだ!!!!」


その日初めての僕のシュートが…


「ナイッシュークロ!!!」


炸裂した。


点差を離した。


しかし、海南も諦めない。

ポストへのパスから点を返してきた。


試合時間がなくなってきた。


「ラスト5分だ!!気抜くな!!」


「はい!!」


残り時間5分。


12対11と、点差は変わらない。


海南高校のオフェンス。
残り時間が少ないというのに、落ち着いたパス回し。


右サイドにボールが来た。

それまで細かく牽制を入れていた僕だったが、疲労が溜まり、ディフェンスが疎かになっていた。


その瞬間をつかれた。


外側に抜かれた。


(ヤバい…)


(これは…)


(いかれる)


僕は少しでも外側から打たせることしか出来なかった。


しかし…


右サイドはシュートを打たなかった。


ボールをコートへ戻していた。


それは、別に間違いでもなんでもなく、


そのボールを空中で、


エース45が取っていた。


そのままシュートへ。


(スカイ!?)


スカイプレー。
その名の通り、空中でパスを取り、空中でシュートを打つという難易度の高いプレー。
使われることはあるが、成功率は低く、ましてや…


この点差、この時間帯では考えられないプレーだった。


(やられた!!)


完璧に裏をかかれた。





1人だけそのプレーに勘づいていた人がいた。


後で聞いたら、右サイドからシュートを打つ気配が感じられなかったと言っていた。


「バシッ!!」


泉さん。
この人はホントに天才だった。


1点のリードを守りきり、赤高は準決勝へと進んだ。


赤高ハンド部史上初のベスト4となった瞬間だった。

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