《MUMEI》

「しょ、小学生じゃないんで・・・」
私は照れ隠しに、ぷいっと横を向いた。大人に大人っぽいと言われるのは嬉しい。先生もそう思ってくれるかな・・・なんて考えてしまう自分がいた。


「今日は何かな?」
私は上履きがほしいと、洋介さんに伝えた。

その時・・・
「あ、ママ!」

洋介さんに抱き抱えられていた、男の子が入口のところへ駆け出した。

振り返ると、少しハデメな綺麗な女の人が立っていた。
「翔太。ただいま。」

「姉貴だよ。」

私が不思議そうに見ている様子を感じて、洋介さんは女の人の正体を明かした。

「こんにちは。」
派手な外見とは裏腹に、優しい笑顔でお姉さんは挨拶をしてくれた。

「ナナさんところの生徒さん。奏ちゃん。」
私も頭を下げて、「こんにちは」と返した。

「樹?まだ先生なんてやってんの?あんな奴が先生なんて・・・」

いつき?とは名波先生のことだろう。お姉さんの声がワントーン下がった。

「昔のことだろ。ナナさんだって傷ついたんだし。」
洋介さんは庇うように言った。何の話だろう?

「・・・奏ちゃんだっけ?カワイイから忠告しておくけど、あの先生は二股男だから、絶対に近付いちゃだめよ。」

肩に手を置かれて、真剣に言われたので、無意識に頷いていた。

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